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横浜家庭裁判所 昭和36年(家)3251号 審判 1961年12月27日

申立人 三村冬美

法定代理人 三村恵 外一名

主文

申立人の名「冬美」を「今栄」と変更することを許可する。

理由

本件申立の要旨は「申立人は昭和三十六年一月十六日鹿久保富司子の非嫡出子として出生したが、同年四月四日頃同女は申立人を申立外関根次郎方に置き去りにして一時所在不明となつたので、同月八日右関根の依頼により申立人法定代理人において申立人を引取り養育することととなり、以来申立人と今栄と呼んでいるが同年十月十六日家庭裁判所の許可を得て正式に養子縁組をしたので、申立人の名の変更の許可を求める」というのである。

よつて本件記録に添付してある戸籍謄本並びに家庭裁判所調査官の調査の結果を綜合すると申立人法定代理人が、事件の実情として述べているところは、これを認めることができ、更に申立人が通称として今栄を使用するに到つた理由は申立人法定代理人が申立人を引取つた当時は申立人を無名と思つていたため、今栄と命名して呼んでいたことに基くものと認められる。凡そ養子縁組に際し養子の名を養親の命名する名に変更して呼称し、養親子間の親密度に対する実質的裏付としようという養親の意図は、心情としては兎も角、改名の理由としては必しも戸籍法第一〇七条第二項にいう「正当な事由」とは認め得ないが、本件の如く出生後間もない申立人を引取り当初無名と信じて今栄と命名呼称のうえ現在に到つており・更に改名により弊害不都合も認め難い場合においては前記法条にいう「正当な事由」あるものと認めるを相当とするから、主文のとおり審判する。

(家事審判官 安達昌彦)

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